美容院や床屋が嫌いなことは、以前に書いた。
あれからずいぶん時間が経ったが、やはり苦手なままだ。よって、相変わらず自分で髪の毛を切っている。
そして、ついに秘密兵器を手に入れた。セルフカット用のバリカンである。
これで、もう無敵である。ははは、参ったか、美容院、床屋ども。あの屈辱的な思いとは永遠におさらばできるのだ。
いつものようにはさみでバッサバッサ切り落としていく。瞬く間に、アーチストっぽい髪型のいい男が出来上がる。ぐはは。
ぐはは。
さて、仕上げだ。キュピーンと秘密兵器を取り出す。
使い方は、付属の取り扱い説明のビデオで完全にマスターした。ぐはは。
ジョリ、ジョリ、ジョリ。
うーん、いい感じ。
ジョリ、ジョリ、ジョリ。
お、思ったよりよく切れるね。
ジョリ、ジョリ、ジョリ。
あ、ちょっと切りすぎたかな。じゃ反対側もジョリ、ジョリ、ジョリ。
んー、ちょっとここは変だな。ジョリ、ジョリ、ジョリ。
ジョリ、ジョリ、ジョリ。
ジョリ、ジョリ、ジョリ。
やがて、鏡の前で呆然と立ち尽くすオレがいた。
「大変言いにくいのですが。」
はい。
「落ち着いて聞いてください。」
はい。
「残念ながら、手遅れです。」
ぎょええええっ。やっぱりそうなのねぇぇぇぇぇ。
かくして、寒風吹きすさぶ季節に、オレは髪をすべて失った。
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