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休日に家でゴロゴロしていると、実に沢山の電話がかかってくる。
オレ自身への電話はすべて携帯電話にかかってくる。よって、自宅の電話番号に電話をかけてくる奴と言うのは、ほとんどすべてが、勧誘や宣伝、宗教などの布教などの、いかがわしいものばかりだ。
「高級リゾートホテルが格安で利用できる、レジャークラブの会員になりませんか。」
年会費がめちゃめちゃ高いんでしょ、どうせ。
「恋人や結婚相手を探す出会いセンターに入りませんか。」
愛人は紹介してくれるんですか。
「土地を運用してみませんか。」
土地で運動してますが、ダメですか。
「投資信託、資産運用してみませんか。」
貯金8万円しかないですけどいいですか。
「就職に役立つ資格を取れます。」
就職に必要なのは、何よりも若さです。若くしてくれるのなら。
「耐震工事はお済みですか。」
テントを買いました。
「金融不安の現在、宝石は価値が変わらない資産です。」
8万円しか貯金ないんですが、いいですか。
最初は、ひっきりなしにかかってくる勧誘電話にうんざりし、電話番号を変えようかと思っていたが、何度も対応するうちに、何だか楽しくなってきてしまった。
ひとつだけ注意しないといけないのは、相手はテレホンキャッチのプロであるということ。行動心理学から割り出した、会話のプロセスを踏むことによって、電話でも簡単にマインドコントロールが出来ると言うことだ。
臨床心理学の専門家であるオレでも、最初のうちは、ヤバい状況が何度かあった。この手の電話やセールスは、とにかく相手の話に乗ってはダメだ。いい加減に相槌でも、と思っていても、相手はそれを想定したプログラムに沿って会話を進めてくる。
ちなみに、最初に記したような、ふざけた受け答えも、ダメである。
ふざけた受け答えであっても、会話として成立してしまえば、相手の思うツボ。相手と会話のキャッチボールは、絶対にしてはいけない。素人の皆さんには、すぐに電話を切るか、無言で一切返事をしないことをお勧めする。
でも、どうしてもお話してみたいって言うチャレンジャーな人のために、引っかからないための方法を少しだけ伝授しよう。
まずは、とにかく相手の質問に答えないことだ。
「イトウさんは御旅行とかはお好きですか。」
そのまえに、一曲いいですか？新曲が出来たんですけど。
「イトウさんは、資格とかに興味あります？」
乳首が痒いんですけど、かいてもいいですか。
「土地活用とか考えたことないですか。」
イナゴは食べたことないです。はちの子ならありますけど。
「イトウさんは現在成人の独身でいらっしゃいますか。」
そういえば、燃えないゴミの日、水曜日に変わりましたよね。
とっさに、このような対応が出来なければ、次のような方法もある。
英語のみで話す。
ハロゥ。
メイアイアスクフスコーリン？
アイセーッド、メイアイアスクフスコーリン？
エクスキューズミー、アイドンノーユウセイ、フゥ、ドゥアイハフトゥキャッチフォユー？
相槌アウ。
「もしもし、イトウさんのお宅ですか。」
アウ、アウ。
「突然のお電話申し訳ありません。ペイオフ対策とか資産運用とかは、されていますか。」
アウ、アウ、アウ、アウ。
「まだまだ日本では、危険な投資は避けたいと言う家庭が多いです。でも海外では、」
アウ。アーウ。アウ、アウ、アウ、アウ。
こんなことを書いてたら、また電話がかかってきた。
じゃあ今日は、相槌アウを実践してみよう。
アウ、アウ、アウ。アウー。アウ、アウ、アウ、アウ。
「もしもし、けんじ君？」
うっ、
冷や汗が滴り落ちる。
電話の相手は、嫁の実家だった。
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