剥がす。ペリペリと剥がす。
保護用フィルムを剥がすのが大好きだ。
新しい電化製品などの、プラスチックの部分に貼られた、薄い透明のビニール。あれです。
保護用フィルムを見付けた瞬間、オレの大脳は興奮して、ドーパミンが出まくる。
フィルムの角をカリカリとやって、それから一気にペリペリペリ。
クフッ。幸せだぁぁぁぁっ。
剥がした下から出てくる、つるつるピカピカのプラスチックの地肌との対面は感動的ですらある。
使い古した電化製品に、まだ剥がしていない保護用フィルムが残っているのを見つけたときは、かなりうれしい。クフッ。
電化製品に限らず、色々な工業製品に保護用フィルムが貼られているから、時々、意外な所にフィルムを見つけることがある。まさに神様がくれたささやかな幸せだ。クフッ。
時々、保護用フィルムだと思って剥がしたら、それは保護用フィルムでなく、印刷してある文字とかグチャグチャになってしまうこともあるが、こう言うハズレがあるから、保護用フィルム剥がしは、余計に楽しい。
エレベータの行き先ボタンのパネルに、保護用フィルムが貼ったままになっている事もある。ムフフ。ペリペリペリ。
自動販売機のコインを入れるところ。
公衆電話のカード度数が表示されるパネル。
コンビニのレジカウンターの天板。
街に出ると、あちこちで、剥がし忘れた保護用フィルムを見つけることができる。いつか、保護用フィルムを探して剥がすという目的のオフ会を開いてみたいものだ。
保護用フィルムに限らず、机の角にのりをこぼして固まったやつとか、かさぶたとか、ささくれとか、日焼けの後の皮とか、剥がすものなら何でも好きだ。剥がすことならオレに任せろっ。
友人宅のテレビのリモコンに、大切そうに残されている保護用フィルムを見つける時もある。ムフフ。ペリペリペリ。
こういう未練たらしい奴の家には、剥がしていないフィルムが大量にあるはずだ。
キラーン。オレの目が輝く。
捜索してみると、エアコンのリモコンとか、電卓のボタンの周りのパネルとか、電気ポットの温度表示パネルとか、とにかく大量に保護用フィルムが見つかる。
当然、全部ペリペリペリ。
それに気付いた友人は、当然怒る。泣きそうになって怒る。
「何で、剥がすんだぁ。何てことをしてくれるんだぁっっっっ。」
口喧嘩なら負けません。
「何で剥がさないんだ。使い古して、捨てる時まで剥がさないんだろ。ボロボロの電化製品のパネル部分がピカピカで、何の意味があると言うのだ。そもそも工場出荷時の傷付きを予防するために貼られているんだぞ。新品の時にこそ、パネルもピカピカであるべきなのに、お前の態度は、工業製品を冒涜する行為だ。だからお前は女々しいって言われるんだ。」
どうだ。参ったか。
しかし。だからと言って、他人の保護用フィルムを勝手に剥がして良い理由にはならないんだけどね。ムフッ。
|