宿便。
2004/02/03

 
 巷では「宿便」と言うものが、まことしやかに語られている。

 何年も何年も長い時間をかけて、大腸壁にヨゴレやうんちが、びっしりこびりついているという発想だそうで。溜まったとされるヨゴレを「宿便」と呼んでいる。ヨゴレが溜まっているのだから、掃除すれば健康になるとか痩せるとかで、「宿便」を強制的に排出すると言う健康食品やサプリメントが大ヒット。

 でもそれ、嘘だから。

 はっきり言って嘘です。
 便秘によって数日間は便が腸管内に留まると言うことはあるにしても、何十年もヨゴレが蓄積されているとと言うことはあり得ない。大腸は下水管や風呂釜の給湯パイプのように、時間の経過とともにヨゴレが溜まったりする代物ではないのだ。

 たとえば手の甲に油性マジックで落書きをして、絶対に洗わないようにしていたからと言って、落書きが死ぬまで残っていると言う事はない。新陳代謝とともに皮膚細胞も入れ替わっていくからだ。大腸も一緒。腸の粘膜上皮細胞は非常に早いスピードで入れ替わっているので宿便などと言うものがずっとくっついていることはあり得ないのだ。

 それに、腸と言うものはパイプのようなものだと思っている人も多いかも知れないが、内容物がなければ、腸管はペタッと潰れている。食べ物のカスや新陳代謝によって出来た老廃物、所謂うんちは、チュルチュルっと絞られるように排泄されていく。

 とにかく、大腸はドロドロに汚れのついた配水管のようなものとは全然違う。
 興味があれば、大腸ファイバーで自分の大腸を見てみてください。きれいなピンク色のきれいな腸管内を見る事が出来るはずだ。

 ちなみに、宿便撃退の健康食品は、おそらくタダの下剤。
 黒い便が大量に出るとの報告が相次ぐが、下痢なんだから量が多くて当たり前。黒いのは、おおかた、鉄分などが含まれていて便が黒くなっているだけなのだろう。何十年も溜まったヨゴレなんかじゃない。

 もう、アホかと。

 ちょっと考えれば分かりそうなものなのに、宿便に対して疑問を持つ人は少ない。
 連日、日本では数え切れないほどのアホな日本人が、アホなものを飲んで、意味のない大量うんちを放出しているわけだ。

 プリプリ、プリプリ、プリプリ。

 趣味や娯楽は、人の生命維持の観点からすれば不必要なもの。別になくても生きていける。それでも、人は無駄なものに好奇心を持ち、貴重な財産や時間をつぎ込んで、趣味や娯楽に没頭する。

 ああ、そうか。そう言うことか。

 必要もないのに大量のうんちをすることは、一つの娯楽な訳ね。
 生理欲求の充足は、なにものにも変えがたい快楽です。それを、趣味として楽しんでいると言うことか。

 なるほど。

 それはそれは、結構なご趣味で。
 

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