通り抜ける風に、かすかに秋の気配がする。
暴力的な暑さでわれわれを苦しめた今年の夏も、いよいよ終焉に向かっているようだ。
秋の気配に、幾ばくかのセンチメンタリズムを感じるのはオレだけではないだろう。夏のエネルギッシュな喧騒から、秋の静寂に移り行く中で、後ろ髪を引かれるような名残惜しさがある。何か大切なものを置き去りにするような、そんな心許なさだ。
さて、夏の定番の食べ物と言えばスイカ。
今年の夏も食べました?
スイカって、実は野菜です。
えっ、くだものじゃないの?
野菜です。
じゃあ、逆に玉ねぎはくだものとか?
玉ねぎも野菜です。最初っから野菜です。
先生、バナナはおやつですか?
んもうっ、そんなこと知りませんっ。
くだものと野菜の分類の定義は、これと言った明確なものはなく、各分野ごとにそれぞれの解釈をしているのが現状であるが、一年草か多年草かで判断するのが、もっとも一般的な定義らしい。一年草が野菜で、多年草はくだもの。
それからすると、スイカは野菜と言うことになる。ま、スイカは瓜ですから。甘い瓜ですから。ゴーヤと一緒ですから。野菜と言うことで片付けて間違いないと思う。
が、その定義を当てはめると、イチゴやメロンも野菜と言うことになってしまう。それはちょっと、無理があるんじゃないか。
いや、オレとしては、やっぱりそれは認められない。あのちっちゃくって可愛らしいイチゴが、野菜だなんて、それはあんまりだ。
イチゴはフルーツです。
世界中を敵に回しても、オレはイチゴをフルーツだと言いたい。
オレだけはイチゴの味方ですから。
どうしてもイチゴを野菜チームに入れるっつーんでしたら、こっちにも考えがある。
だったら、アスパラガスはフルーツだコノヤロー。
取り乱しました。スミマセン。
こんないさかいをなくすためにも、くだものと野菜の間の微妙なライン上の農作物用に、もう一つ新たにカテゴリーを増やしてみるのもいいんじゃないか。
くだものとやさいの間だから、「やだもの」とか「くだもい」とか。ベジタブルとフルーツの間だから、「フジタブル」とか「ベジーツ」でもいい。
三菱東京UFJのように、どちらの顔も立てて、「くだものやさい」ってのはいかがか。
あ、これは、なんだか悪くない。これで肉があれば、栄養バランスバッチリな感じだ。よし。この際だから肉も入れとこう。
「くだものやさいにく」。
スイカは「くだものやさいにく」です。
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