脱皮。
2004/11/02

 
 ベランダの手すりに、カマキリの卵が産みつけられているのを発見した。わー、こんなところにも命の営みだー、自然だー、などとエコロジー気分で浮かれていると大変なことになる。後日、チビカマキリがうじゃーっと、そりゃ、もう、うじゃーっと、大量に出てくるのだ。

 カマキリは、生まれた時からカマキリの形をしている。小さくたって、三角の頭と、大きな鎌をもっていて、形は成虫と大差ない。そんなミニチュアカマキリが大量に出てきたら、パニックになる。

 オレはカマキリの卵を、近所の草むらにそっと移し変えておいた。ココなら、誰もパニックにならず、彼らものびのびと生まれことができるだろう。未来に羽ばたけ、カマキリたちよ。

 ところで昆虫と言えば脱皮だ。正直、羨ましいぞ。オレも脱皮してみたい。脱皮は何だか気持ちよさそうだ。脱皮するたびに生まれ変わったように、身も心も清々しくリフレッシュできそうだ。人間も脱皮する生物として進化すればよかったのに。

 人が脱皮する生物だったとすると、我々の生活も色々違っていただろう。

 脱皮休暇とか。
 脱皮したての人は、プールは見学とか。
 ドン臭い奴は、授業中に始まってしまって、「せんせーい、田中君が脱皮始めてまーす。」って、優等生ぶった奴にチクられたり。

 「お嬢さん、首に脱皮の皮がついてますよ。」
 「あら、いやだ。恥ずかしいわっ。」
 とか言って、恋が始まったり。

 トム・クルーズやデカプリオの皮が、Yahooオークションで高値で売買されたり。
 脱皮の回数が多い人がギネスブックに載ったり。
 脱皮の皮を食べる健康法が流行ったり。

 ところで、昆虫は、カマキリのように、姿形が生まれた時からさほど変わらないタイプと、カブトムシやチョウチョみたいに、成長と共に姿形を変えていくタイプに二分されるが、人間が脱皮する生物だった場合だって、それは同じだ。
 ちなみに昆虫が姿形を変える事を、変態と言う。
 変態する人と、しない人。
 ややや、これは、今でも同じことが言える気がするぞ、別の意味で。

 変態するタイプの人は脱皮するたびに、全然違う人間になっちゃうんですよ。脱皮したら、いきなりマッチョに変身とか。脱皮の度に、ハンサムになったりダサ男なったり、突然さなぎになったり、もう人生がギャンブル。

 駅のベンチで、酔っ払って眠ってしまったオッサンが、そのままさなぎになってしまったり。
 「ちょっと、お客さん、こんなところでさなぎにならないでよ。」
 「うーん、むにゃむにゃ。」
 「ホント、困りますから。お客さん、お客さんっっっ。」
 一度さなぎになってしまうと、一週間ぐらいはそのままそこで眠り続けてしまう。駅や公園のベンチには、そんな困ったさなぎが時々転がっていたりする。そんなさなぎに、ヤンキーが白いマジックで、卑猥な落書きをしたりもする。

 うーむ。楽しそうだ。
 よし、人間も脱皮できる生物になりましょうよ。何億年も、何世代も脱皮の練習を続けたら、そのうち脱皮ぐらいできるようになると思う。
 早速、未来の人類のために、脱皮の練習を始めるかな。

 ムムム。

 ムムム。

 あ、力んだら屁が出た。
 

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