夕刻の暗がりの線路沿いの小路で、僕は坊ちゃんと電車を待っている。かすかにチュンチュンと線路が鳴き始め、やがて遠くに列車のヘッドライトの光が見える。光は見る見る大きくなり、そして轟音と共に列車が通り過ぎてゆく。列車が巻き起こした風に髪を遊ばれ、少し顔をしかめて列車を目で追う。
列車の中は、眩い光に満ちていて、四角い窓から光が零れ落ちている。そして、その光に包まれて人が運ばれていく。光の中は、僕達の立っている場所とは違う種類の時間が流れていて、その人たちは何処か特別な場所へ運ばれていくような気がする。とてもステキな場所へ。僕の知らない、遠い場所へ。
列車が通り過ぎた後の乱れた大気の中で、いつも取り残されたような物悲しさを感じる。
でも、僕の居場所はここにあるんだ。
物悲しさの後に、柔らかな幸福感がふわりと舞い降りる。坊ちゃんの小さな手をそっと握り、そのぬくもりを感じた。
|