腐乱死体。
2006/04/20

 
 昼食を買うためにオフィスを出ると、朝までの嵐のような天気が嘘のように、空はすっきりと晴れ渡り、潤いたっぷりの心地よい風がそよいでいた。午前中の遅れを取り戻すように、ぐんぐんと気温は上昇し、少し動くと汗ばむぐらいの陽気となっている。オレは新鮮な春の空気を肺一杯に吸い込んだ。しかし。

 うわっ、くさい。

 何じゃ、この臭いは。めっちゃ、くさい。
 そう言えば、この臭いは、以前にも嗅いだ事があるぞ。その時の臭いの発生源は、猫の腐乱死体だった。オレが働いているビルと隣の建物の間の隙間で、猫が力尽きて、その屍が朽ちていく際に、強烈な臭気を放っていたのだった。今、爽やかな春の風と共に、漂っている悪臭は、まさしくその時と同じ臭い。

 チッ、腐っていやがる。

 例えば、象って、死ぬ場所が決まっているらしいじゃないですか。象の墓場と呼ばれているその場所に、象は死期が近づくと、ひっそりと群を離れてやってきて、一人で静かに息を引き取る。

 このビルの隙間も、そう言う場所なんじゃないのかな。でも、死ぬのは象ではなくて猫なんだけどね。まぁ、こんな隙間に象は、もともと入れないんだけど。じゃあ、象が入れるほどの隙間だったら、象なのかって言われると、それはまた違う問題なんだけど。まぁ、イノシシなら。イノシシぐらいならいけるんじゃないかな。

 って、そう言う話をしているわけじゃないんだ。象でも猫でもどっちでもいいんだよ、人でなければ。って、うわ。自分で言ってリアルに想像して、気持ち悪くなってしまった。

 人だったらどうしよう。

 ったく、もう。おーい誰か。ちょっと誰か見てきてよ。っとに、おーい。誰か。誰かおらんか。

 ところで、漢字で腐乱死体と書くと、いかにも腐乱死体っぽい。グズクズに腐ってて、変な汁とか出てて、ハエが飛び回って、色はどす黒い灰色で、所々白っぽいところや茶色っぽいところがありそうな、そんな感じ。うひゃー、気持ち悪っ。

 でもね、オレは大発見をしてしまったのです。ほんのちょっと工夫をするだけで、このグズグズの気持ち悪さが完全に消えてしまう。どんな工夫か知りたい?って、もったいぶらずに教えましょう。

 カタカナで書く。

 フランシタイ。

 フラン。

 フランちゃん。

 ほらっ。カタカナで書くだけでアラ不思議。まるでおとぎ話の国から飛び出てきた美少女の名前のような響きの言葉になる。汚れを知らない、純真で可憐な少女。明るくって、ちょっぴり恥ずかしがり屋で、でもって、自分のことをフランって呼ぶ。

 フラン、お花畑に住んでるの。

 いやん、フラン、恥ずかしいっ。

 うわー、もう、なんつーか、キャピキャピのピンク色。あまりのキャピキャピっぷりに、こっちが恥ずかしくなってきた。

 そして、仕上げです。腐乱死体の死体の部分を、したい、と書いて、フランにくっつける。

 フラン、したい。

 フラン、したいの。

 フラン、したくってたまらないの。

 って、うわー、エロい。エロすぎですよ、お客さん。

 腐っているのは、お前の頭の中じゃないのか、おい。
 

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