トローチ。
2006/04/25

 
 もう、喉が痛くて。

 あと咳が酷くて。地の底から得体の知れない邪悪な何が這い出てくるような、酷い咳。ゲホッ、ゲホッ。そして、少しでも声を出そうものなら、声帯の振動が咳の誘引となるから、喋れない。ゲホッ、ゲホッ。オレに内線を回すな、コラ。

 気合で乗り切ろうとしたのだけれど、症状はどんどん悪化するので、やむなく受診した。抗生剤と咳止めや去痰剤などの内服薬と、そしてトローチを処方された。

 ここでちょっと豆知識。トローチって外用薬の取り扱いって知ってました?経口摂取するから、内服薬っぽいんだけど、湿布や塗り薬と同じく外用薬なのだ。

 しかし、これは薬というよりお菓子だな。甘くて美味しくて、ちっとも効いている感じがしない。市販されている南天のど飴のほうが、匂いと言い味と言い、いかにも薬っぽくて、効いている感じがする。

 そうそう、薬っぽい味で思い出したんだけど、リゲインとか、リポビタンDみたいな、いわゆる滋養強壮ドリンクって、独特の薬っぽい臭いと味がしますよね。あれって、タダの演出だって知ってました?今の技術では、色々な薬効成分の臭いや味を完全に消して、飲みやすい物を作ることもたやすいのだそうです。しかし、それでは消費者が納得しない。「えっ、マジでこれ色々入ってるって、嘘じゃねぇ?」って疑われてしまう。だから、ああいう味と臭いをわざと付けているんだそうだ。

 また話がそれてしまった。今日話したいことはそんなことじゃないんだ。話そうと思っていたのは、トローチです。トローチの穴のことです。

 トローチの穴に関する豆知識。
 あの穴って何のために開いているかというと、誤飲した時、気道をふさいで窒息してしまわないように設けられた安全装置なんだそうです。分かりやすく言うと、喉に詰まらした時の空気の通り穴。もし、よかったら、今度喉に詰まらせてみてください。きっと、大丈夫ですから。

 ところで、昔、こんな形のお菓子があったな。トローチと同じぐらいの大きさの、形もトローチみたいなドーナツ型の、ラムネか何かだったと思う。トローチと根本的に違うのは、その隠された機能。そのお菓子は、穴のところに息を吹き込むと、ピーと鳴るんです。中央の穴のところに溝が切ってあって、それが笛の原理で、息を吹き込むと音が出る仕組みになっていた。

 どうせなら、トローチも、音が出るようにしたらいいのに。

 いや、むしろ、トローチこそ音が出るようにすべきだ。トローチを舐めなければならない状態というのはつまり、喉が痛いんです。めっちゃ痛いんです。痛くて喋れる状態じゃないんです。声が出せないときに、トローチで意思表示が出来たら便利だと思うんだけど。

 Yesをピー。
 Noをピッピッ。

 YesとNoの意思表示さえ出来れば、世の中のたいていのことは事が足りる。

 「街で、この音が聞こえたら、声が出なくて困っている人のサインです。少しだけ力を貸してください。AC公共広告機構です。」

 ほら、これはもう、人に優しいバリアフリー社会に役立つ社会資源です。どうですか明治製薬さん。実現してみませんか、鳴るトローチ。略してナルトロ。金型をちょちょっと変更するだけで簡単に作れると思うんですけど。

 そんなことを考えながら、鳴らないトローチをスカスカと吹いていたら、ムグッ。ぐはっ、飲み込んだ、喉に詰まった。でも、穴が開いていて、セーフ。窒息せずにすみました。

 って、うわ。めっちゃベタ。こんなベタなオチしか思いつかない自分が腹立たしい。
 ち、チクショー。
 

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