甘い海水。
2006/08/25

 
 インドのムンバイで海水が甘くなったといううわさが広まり、大騒ぎになったらしい。数千人もの人が海岸に殺到して、海水を飲みまくったそうで。

 うひゃあ、あまーい。

 めっちゃ、あまーい。あまくてうれしーっ。

 と、大勢の人が海岸で押し合いへし合い、ズルズル音を立てて、ひゃーひゃー言いながら、海水を飲みまくるって、うわぁ、楽しそう。

 インドつったら、ゼロを発見した国です。数学の国です。IT技術の最先端をひた走るハイテクの国です。そのハイテクなインド人が、海水が甘いぐらいのことで、海岸に殺到するって、どうなの。でも、まぁ、オレも行くかな。海水が甘いとなれば、オレも我先競って海岸に走って行って、海水を飲むと思う。

 うわっ、めっちゃ、あまーい。あまくてうれしーっ。

 ねぇ、ねぇ、ちょっと、ちょっと。
 わざわざ、そんな訳の分からないものを飲まなくても、甘いものなら他に幾らでもあるじゃん。チョコとか、サイダーとか、キャラメルとか。それじゃダメなの?

 いや、ダメなんですね。
 チョコが甘いって、それは当たり前な話。塩辛いはずの海水が甘いって、その不思議さが楽しい訳だ。そのギャップにときめくんだな。子供なのに六法全書を暗記してるとか、ジジイなのにすんげぇ強いとか、カレーなのに白いとか。あと、清楚なのにエロいとか。うわぁ、めっちゃドキドキする。つまり、海水が甘いってのは、そう言うことだ。

 ところで、本当に海水は甘くなったのだろうか。

 海の塩辛さって、普通の辛さじゃない。なんと言うか、えぐいんですよ。飲もうものなら、オェッとなる。それががぶ飲みできるような甘い飲み物になるなんて、かなり疑わしい。

 これはズバリ、ガセネタではないのか。

 我々人類の陥りやすい弱点の一つに、集団ヒステリーがある。もともと人の心理には、「大勢の人が言っていることが、正しい情報だ。」と思ってしまう傾向があるのだが、ここにインパクトの強い情報が入り込んで暴走すると、集団でパニックになる。自分の頭で冷静に状況分析が出来なくなって、うわさを無条件で信じて右往左往してしまう。

 でも、いくらうわさに惑わされて海水を飲んだとしても、さすがに飲んだ瞬間にハッと我に返ると思うんですよ。だってそれは海水ですよ。飲んだらオェっとなる。

 オェっ。

 ち、チクショー。ちっとも甘くないじゃんか。

 く、悔しいっ。冷静に考えたら、海水が甘くなるわけないじゃん。そんな簡単なことに気づかなかった自分の、バカ、バカ。もう、チョー恥ずかしい。

 「ねぇ、海水飲んできたんでしょ、どうだったの?」

 ・・・・も、もう、めっちゃスゲーよ。

 もちろんこれでは、正しく伝わらない。と言うより、あえて正しく伝えない。伝えてやるものか。もう、あまりのバカバカしさに、悔しさや恥ずかしさが入り混じって、あと、ちょっぴりいたずら心も働いて、真実を言う気は失せてしまっているのだ。

 そして、「うわっ、マジ?やっぱスゲーの?じゃ、オレも飲もうっ。」って、また一人バカな犠牲者が生まれる。

 ニュースによると、水は汚染されて茶色に濁っており、ムンバイ市当局は「病気になる恐れがある」と飲むのをやめるよう呼び掛けているらしい。でも、当局が言うことなんて誰も聞かない。次から次へと、ひゃーひゃー言いながら人々が押し寄せてきて、ズルズル飲んで、オェっとなる。

 いゃあ、好きだな、こういうの。
 海水がホントに甘かろうが、ガセネタだろうが、そんなことはもうどうでもいいや。大勢の人でバカっぽいお祭り騒ぎをしているってのが楽しくて好き。

 オレも、飲みに行こうかな。
 

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