memory
〜記憶〜

グラスに氷を入れ、ブランデーを静かに注ぐ。
ビンの注ぎ口がリズミカルに音を立てる。
氷は艶やかにぬめり、琥珀色の液体はゆらゆらと揺らめく。

ほんの少し。
その美しい液体を、ほんの少し口に含む。
私の体を、液体が熱を伴ってゆっくりと流れていく。
私は香りに包まれる。

香りは、記憶の海だ。

私は広大な記憶の海の真中を漂う。
そして、目を閉じて、息を止めて。
私はゆっくりと潜っていく。
深く、深く。

カラン、と氷がグラスを鳴らす。

rm